ネットで売れば楽だと思っていた。実際にやってみて甘かった話

ネットで売れば楽だと思っていた。実際にやってみて甘かった話

「ネットで販売すれば、もっと楽に売れるんじゃないか」

お菓子の販売を始めた頃、そんなことを考えていました。

店舗で販売する場合は、場所が必要です。
営業時間も決めなければなりませんし、商品を並べ、接客をして、レジをして、お客様が来るのを待つ必要があります。

一方、ネットショップなら24時間注文を受けられます。

お客様は全国にいる。
店舗のように営業時間にも縛られない。
一度商品ページを作れば、寝ている間にも注文が入るかもしれない。

そんなイメージがありました。

特に、InstagramなどのSNSを見ていると、きれいな写真の商品が次々と流れてきます。

「オンライン販売開始しました」

という投稿のあとに、

「たくさんのご注文ありがとうございます」

と続いているのを見ると、ネットショップを開けば自然に商品が売れていくようにも見えます。

私自身も、

「店舗だけでは商圏が限られているけれど、ネットなら全国に販売できる」

「ネット販売を伸ばせば、売上を安定させられるのではないか」

と考えていました。

ところが、実際にやってみると全く違いました。

ネットショップを作ったからといって、商品が勝手に売れるわけではありません。

むしろ、

「店頭で販売するのとは、全く別の商売を始めた」

くらいに考えた方がいい。

実際にやってみて、そう感じています。

目次

ネットショップを作れば売れる、は完全な勘違いだった

ネット販売を始める前、一番大きく勘違いしていたことがあります。

それは、

「ネットショップに商品を並べれば、誰かが見つけてくれる」

と思っていたことです。

実店舗であれば、少なくとも店の前を人が通ります。

看板を見て、

「こんなお店ができたんだ」

と知ってもらえることもあります。

販売会であれば、チラシを配ったり、近隣のお客様に告知したりすることで、ある程度は来店につなげられます。

ところがネットショップの場合、ショップを作っただけでは、本当に誰も来ません。

インターネット上には、無数のお店があります。

クッキー缶だけを検索しても、全国の有名店、百貨店ブランド、専門店、個人店まで大量の商品が出てきます。

そこに新しくネットショップを一つ作ったとしても、お客様からすれば、その存在を知る理由がありません。

これは、ものすごく当たり前の話です。

しかし、自分が販売する側になると意外と見落としてしまいます。

ネットショップを作ることと、ネットショップにお客様を集めることは全く別です。

私は最初、

商品を作る

写真を撮る

ネットショップに掲載する

売れる

くらいの感覚で考えていました。

しかし実際は、

商品を作る

写真を撮る

商品説明を書く

価格を決める

送料を設定する

ネットショップに掲載する

SNSで発信する

何度も商品の存在を伝える

ショップを見てもらう

他の商品と比較される

ようやく購入を検討してもらう

という流れです。

「販売する場所を作ること」と「売ること」は別問題でした。

実店舗で例えるなら、人通りの全くない山奥に店を建てたようなものです。

きれいなお店を作って、商品を完璧に並べたとしても、そこに店があることを誰も知らなければ、お客様は来ません。

ネットショップも全く同じでした。

おいしいだけでは、画面の向こうには伝わらない

もう一つ難しかったのが、商品の魅力を伝えることでした。

私たちが扱っているのはお菓子です。

実際に食べてもらえば、

食感
香り
甘さ
素材
口どけ

など、いろいろな魅力を感じてもらえます。

店頭販売であれば、お客様から、

「これはどんな味ですか?」

と聞かれれば説明できます。

商品を実際に見てもらうこともできます。

場合によっては、お客様との会話の中で、その方に合った商品をおすすめすることもできます。

しかしネットでは、それができません。

お客様が判断できる材料は、

写真
商品名
商品説明
価格
口コミ

くらいです。

つまり、どれだけおいしい商品を作っていても、

「おいしそうに見えなければ売れない」

という現実があります。

これは、作り手としてはなかなか厳しいものがあります。

こちらとしては、

「味には自信がある」

と思っています。

でも、お客様はまだ食べていません。

画面に表示された数枚の写真から判断するしかありません。

写真が暗い。

大きさが分かりにくい。

包装が分からない。

何個入っているのか分からない。

どんな場面で食べる商品なのか分からない。

そうなると、商品自体がおいしいかどうか以前の問題です。

買う理由がありません。

ネット販売を始めてから、

「商品を作ること」と「商品の魅力を伝えること」は別の技術なのだと感じるようになりました。

写真一つをとっても、

どの角度から撮るか。

背景をどうするか。

箱を見せるのか、お菓子を見せるのか。

断面を見せるのか。

手に持った写真を入れるのか。

ギフトとして使う場面を見せるのか。

考えることはたくさんあります。

説明文についても同じです。

単純に、

「バターを使用したおいしいクッキーです」

では、ほとんど伝わりません。

誰が食べるのか。

どんな時間に食べてほしいのか。

どんな食感なのか。

どんな素材を使っているのか。

プレゼントにも使えるのか。

商品を食べたあと、どんな気持ちになってほしいのか。

そこまで考えて、初めて商品の価値が少しずつ伝わります。

ネット販売は、接客をしなくていい商売ではありませんでした。

むしろ、

「商品ページそのものが接客をし続ける商売」

でした。

売れたら売れたで、発送という仕事が待っていた

そしてネット販売には、もう一つ大きな仕事があります。

発送です。

ネットショップを始める前は、

「注文が入ったら箱に入れて送ればいい」

くらいに思っていました。

これも甘かったです。

まず、梱包資材が必要です。

商品を入れる箱。

緩衝材。

送り状。

テープ。

場合によっては手提げ袋やメッセージカード。

そして食品なので、

商品が割れないか。

高温にならないか。

賞味期限は大丈夫か。

配送中に箱が動かないか。

雨に濡れないか。

といったことまで考えなければなりません。

注文が1件なら、それほど大変ではありません。

しかし10件、20件とまとまって入ると状況が変わります。

注文内容を確認する。

商品をそろえる。

間違いがないか確認する。

箱に詰める。

送り状を貼る。

発送する。

発送通知を送る。

これを繰り返します。

さらに、

「○月○日に届けてほしい」

「誕生日なのでメッセージを入れてほしい」

「自宅ではなくプレゼント先に直接送ってほしい」

など、ご注文ごとに条件が違うこともあります。

店舗販売なら、お客様に商品を渡せば販売は完了です。

しかしネット販売では、

注文が入った瞬間は、まだ仕事の半分です。

そこから商品がお客様の手元に届くまでが販売です。

そして、もし商品が割れていたり、指定日に届かなかったりすれば、せっかくのお菓子の印象まで悪くなってしまいます。

ネット販売では、

製造
販売
接客
梱包
物流

まで、自分たちで設計する必要がある。

ここまでやって初めて一つの商売になります。

「店舗を持たないから固定費が少ない」

というメリットは確かにあります。

ただし、

「店舗がない=仕事が少ない」

ではありませんでした。

店舗でやっていた仕事がなくなるのではなく、別の仕事に置き換わっているだけなのだと思います。

一番難しかったのは「一度買ってもらうこと」ではなかった

ネット販売を続けて感じたことがあります。

それは、一度商品を買ってもらうことだけを目標にすると、かなり苦しくなるということです。

広告を出す。

SNSに投稿する。

キャンペーンをする。

新商品を出す。

こうした施策によって、一時的に注文が増えることはあります。

しかし毎回、新しいお客様を探し続けなければならない状態では、なかなか安定しません。

ネット販売で本当に重要なのは、

「また買いたい」

と思ってもらえるかどうかだと思います。

実際、食品には大きなメリットがあります。

食べればなくなることです。

洋服や家具とは違い、お菓子は消費されます。

おいしかった。

家族にも好評だった。

プレゼントしたら喜ばれた。

そう思ってもらえれば、再び注文していただける可能性があります。

逆に、

一度販売して終わり。

一度広告を出して終わり。

一度SNSでバズって終わり。

では、売上は安定しません。

ネットショップを始めた頃は、

「どうすれば注文が増えるか」

ばかり考えていました。

しかし今は、

「一度購入してくださった方に、もう一度思い出してもらえるか」

の方が大事なのではないかと思っています。

例えば、

季節限定の商品をつくる。

定期的に新商品を出す。

SNSで製造風景を見せる。

ニュースレターを送る。

イベント販売につなげる。

ギフトシーズンに思い出してもらう。

こうした積み重ねです。

ネットショップだけで売上を作るというより、

SNS
リアル販売
イベント
オンラインショップ
口コミ

これらがつながって、少しずつお客様との関係ができていく。

その結果としてネットショップでも購入してもらえる。

私たちの場合も、ネットだけですべてを完結させるのではなく、実際の販売やお客様との接点をどうオンラインにつなげるかが重要だと感じています。

「ネット販売は楽」ではなく、「可能性が広い」

ここまで書くと、

「ネット販売は大変だからやめた方がいい」

という話に見えるかもしれません。

そういうことではありません。

今でも、ネット販売には大きな可能性があると思っています。

店舗では出会えなかった地域のお客様にも商品を届けることができます。

大阪で作ったお菓子を、北海道や東京、九州のお客様に届けることもできます。

営業時間も関係ありません。

小さなお店でも、全国のお客様とつながることができます。

これは、やはりすごいことです。

ただ、

「ネットに商品を載せれば売れる」

という考えでは、うまくいかない。

ネット販売も、店舗経営と同じように一つの事業です。

どの商品を売るのか。

誰に売るのか。

どうやって知ってもらうのか。

なぜ自分たちの商品を選んでもらうのか。

どうやって届けるのか。

どうすればもう一度購入してもらえるのか。

そこまで考える必要があります。

むしろ、店頭なら会話で補えていた部分を、ネットではすべて仕組みに変えなければなりません。

写真で伝える。

文章で伝える。

SNSで伝える。

包装で伝える。

商品が届いた瞬間にも伝える。

つまりネット販売は、

「接客をなくすこと」

ではなく、

「接客を仕組みに変えること」

なのだと思います。

私自身、

ネットショップを作れば、もう少し簡単に売れると思っていました。

全国がお客様になる。

24時間販売できる。

店舗に立たなくても注文が入る。

確かに全部間違いではありません。

でも、そこだけを見ていました。

全国に販売できるということは、全国のお店と比較されるということでもあります。

24時間注文できるということは、24時間商品ページが接客し続けなければならないということでもあります。

お客様と直接会わないということは、商品やブランドの魅力を言葉と写真だけで伝えなければならないということでもあります。

メリットの裏側には、必ず別の難しさがあります。

実際にやってみなければ、分からなかったことでした。

それでも、私はネット販売をやってみてよかったと思っています。

売れなかったからこそ、

「なぜ買ってもらえないのか」

を考えるようになりました。

写真を見直しました。

商品ページを見直しました。

価格について考えました。

送料について考えました。

商品の見せ方について考えました。

そして、

「自分たちは何を売っているのか」

まで考えるようになりました。

お菓子を売っているようで、

実際には、

誰かに渡す時間だったり、

家族で食べる時間だったり、

自分への小さなご褒美だったりするのかもしれません。

ネット販売を始めたことで、逆に商品そのものについて深く考えるようになりました。

「ネットで売れば楽」

ではありませんでした。

その考えは、完全に甘かったと思います。

でも、

「ネットだからできること」

は確実にあります。

重要なのは、ネットショップを作ることではありません。

その先にいる人に、

どうやって知ってもらい、

どうやって興味を持ってもらい、

どうやって安心して購入してもらい、

そして、

どうすればもう一度思い出してもらえるのか。

結局、ネットでもリアルでも、商売の基本は同じなのだと思います。

商品を作って終わりではない。

ネットショップを作って終わりでもない。

「どうすればお客様に選んでもらえるのか」

そこを考え続けることが、商売なのだと実感しています。

最初に想像していたより、ずっと大変でした。

ただ、最初に想像していたより、ずっと奥が深い世界でもありました。

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